台北栄民総医院(台湾北部・台北市北投区)と国立成功大学医学院附設医院(台湾南部・台南市北区)は24日、合同記者会見を開催し、生後52日の男の赤ちゃんへの肝臓の生体移植に成功したことを明らかにした。術後の経過は順調。生後52日での肝臓の生体移植の成功は、台湾では初めてのケース。
国立成功大学医学院附設医院新生児科の林永傑医師によると、手術を受けた赤ちゃんは早産で、出生直後から食欲がなく、むくみや低血糖などの異常が確認された。入院期間中の検査で肝機能異常が認められ、非常に珍しい母体血中の抗体が胎児の肝臓に障害を与える母児間同種免疫肝疾患「新生児ヘモクロマトーシス」であり、危険な状態だと診断された。
林永傑医師によると、「新生児ヘモクロマトーシス」は母親が妊娠中、なんらかの原因により生まれた抗体が胎児の肝細胞を破壊し、肝臓やその他の臓器に鉄沈着を生じさせるという疾患。薬物治療で病状をコントロールするしか対処法はなく、早い段階で肝臓移植を受けることができなければ致死率100%と言われている。
当時、赤ちゃんは生後45日で体重は4キログラムしかなく、手術には困難が伴うことが予想されたが、林永傑医師はさまざまなルートで肝臓移植の専門家を探し、さらには自身のフェイスブックでも支援を求める書き込みを行った。その結果、台北栄民総医院児童外科の劉君恕主任にたどり着き、何度か連絡を取り合った末、この赤ちゃんのために肝臓の生体移植を行うことを決めた。
台北栄民総医院では児童外科、整形外科、児童医学部のスタッフがチームを組み、赤ちゃんの父親の肝臓の一部を赤ちゃんに移植することにした。医療チームは3Dプリンタの技術を使って肝臓の模型を作り、移植する肝臓の体積を最小限に抑えられるよう移植手術の過程をシミュレーションした。
こうして昨年11月末、生後52日で赤ちゃんへの肝臓移植手術が行われた。手術は12時間に及んだが、無事成功に終わった。新生児に対する肝臓の生体移植手術としては台湾で最初の成功例となった。
この男の赤ちゃんはまもなく生後3か月になる。体につながれた誘導管や人工透析のカーテルもすべて外れ、傷の回復も良好。まもなく退院する予定だという。